前回の事業主に労災支給処分の支給要件非該当性に関する主張容認の生地で出てきたメリット制の趣旨概要を説明したいと思う。
労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号。以下「労働保険徴収法」という。)において労災保険率は定められている。この労災保険率は、労働者を使用して事業を行う事業主の労災保険料を算定する際に用いられており、業種ごとの災害率等に応じて定められている。しかし、業種が同一であっても、個々の事業場ごとの災害率には差が認められる。
そこで、事業主の負担の公平を図るとともに、事業主の災害防止努力を促進するため、一定規模以上の事業主のうち、
イ 継続事業(労働保険徴収法第12条第3項、事務所や工場など期限のない事業等及び一括有期事業)を行う事業主については、連続する3保険年度の間における個々の事業主の災害率に応じて、その事業についての事業の種類ごとに定められた労災保険率を一定の範囲内で引き上げ又は引き下げし、当該料率(以下「メリット労災保険率」という。)を当該3保険年度の最後の年度の次の次の保険年度の労災保険率とすること、
ロ 有期事業を行う事業主については、当該事業期間中における個々の事業主の災害率に応じて、保険料の額を一定範囲内で引き上げ又は引き下げるこ
ととしている。
このように労災保険率あるいは保険料の額を増減する制度をメリット制といい、このメリット制が適用される事業主を特定事業主という。
メリット制は、労働保険徴収法第12条第3項9に規定されており、労災保険給付(特別支給金を含む。)の額を、保険料(通勤災害や事務経費に応じる額を除く。)の額で除して得た割合(以下「メリット収支率」という。)とし、メリット収支率により最大 40%の範囲内で労災保険率を増減するという制度となっている。
この記事は私が書きました
三重県出身。工場の派遣バイトの傍ら社会保険労務士の資格を取得。中途採用で地元商工会議所勤務を経て、労働局の窓口業務を通して様々な事例を経験。 非正規就労の悲哀と行政の仕組みを熟知しているシナジー効果を強みとし、皆様のサポートをいたします。