前回、注意・指導にあたっても適切な言い方・言葉選びが必要であり、是正につなげる(目的)ために適切な言い方になっているか注意が必要であると書いた。
能力不足や行動様式不良の者に対する改善指導として、厳しい叱責は許されかを裁判例で考えてみたいと思う。

M社事件(東京地判平成27年8月7日)
部下である従業員の立場にしてみれば、真面目に頑張っていても営業成績が残せないことはあり得ることであるが、さりとて、それをやむを得ないとか、それでも良しとは通常は考えないはずである。成績を挙げられないことに悩み、苦しんでいるはずである。にもかかわらず、数字が挙がらないことをただ非難するのは無益であるどころか、いたずらに部下に精神的苦痛を与える有害な行為である。部下の悩みを汲み取って適切な気付きを与え、業務改善につなげるのが上司としての本来の役目ではないかと考える。X自身も営業職として苦労した経験はあるだろうし、それを基に、伸び悩む部下に気付きを与え指導すべきものである。簡単に部下のやる気の問題に責任転嫁できるような話ではない。証拠調べ後の和解の席で、Yから「退職勧奨」を受けたことは当裁判所に顕著な事実であるが、これをもってようやく部下らの精神的苦痛を身をもって知ったというのなら、あまりに遅きに失する。」

能力不足や行動様式不良の者に対する改善指導として、厳しい叱責従業員を追い込み、精神障害の発症を惹き起こすリスクが大きい
この場合には厳しい叱責ではなくサポート必要である。

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