厚生労働省は、 職場におけるパワーハラスメントで精神的な攻撃の内容を以下の通りとしています。

⑵ 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
(イ) 該当すると考えられる例
人格を否定するような言動を行う。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む。
② 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う
③ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う
④ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信する
(ロ) 該当しないと考えられる例
① 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をする
② その企業の業務の内容や性質等に照らし重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をする

M道路事件 (高松高判H21年4月23日)
「架空出来高の計上等につき、上司らの是正指示から1年以上が経過した時点においても是正がされていなかったことや工事日報が作成されていなかったことなどを考慮すれば、Aの上司らがAに対して不正経理の解消や工事日報の作成についてある程度の厳しい改善指導をすることは、Aの上司らのなすべき正当な業務の範囲内にあるものというべきであり、社会通念上許容される業務上の指導の範囲を超えるものと評価することはできないから、上記のようなAに対する上司らの叱責等が違法なものということはできない。 」

上司が部下を叱責すること自体が直ちにパワハラに該当するのではない。
なぜなら、監督者企業秩序維持の観点から部下に服務規律を遵守させる(注意・指導)責任がある。
もっとも、ある程度厳しい改善指導が許容されるとしても注意の仕方には当然に配慮が必要職場環境論

ARF事件(大阪高裁H25.10.9判決)
「監督者が監督を受ける者を叱責し、あるいは指示等を行う際には、労務遂行の適切さを期する目的において適切な言辞を選んでしなければならないのは当然の注意義務と考えられるところ、本件では、それなりの重要な業務であったとはいえ、いかにも粗雑で、極端な表現を用い、配慮を欠く態様で指導されており、かかる極端な言辞を用いるほどの重大な事態であったかは疑問であるし、監督を受けるものとして、監督者がそのような言辞を用いる性癖であって、その発言が真意でないことを認識し得るとしても、業務として日常的にそのような極端な言辞をもってする指導・監督を受忍しなければならないとまではいえず、逆に、監督者において、労務遂行上の指導・監督を行うに当たり、そのような言辞をもってする指導が当該監督を受ける者との人間関係や当人の理解力等をも勘案して、適切に指導の目的を達しその真意を伝えているかどうかを注意すべき義務があるというべきである。」

注意・指導にあたっても適切な言い方・言葉選びが必要
また、是正につなげる(目的)ために適切な言い方になっているか注意する必要がある。

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