障害年金の相談窓口を担当していて、事例の多くは「ギリギリまで我慢してきて、もうこれ以上は無理なので助けてほしい」と言った気持ちからの相談になります。
本当に頑張ってこられたのは伝わってきます。重たい症状に苦しんでいて、その苦しみも長期間にわたって続いているのも分かります。
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この考え方は障害年金との相性は非常に悪いです
どれだけ我慢し続けてきたのか、詳しくお話しくださいます。もう20年にもなるんです。その間、助けを求めずに生きてきたのだから、20年分とは言わないが少しくらいは助けてくれたっていいじゃないですか!
・・・・・・障害年金となると、初診日の証明が必要なんですね。こんなことを言われてしまったら、20年も前の証明を求められてしまい手詰まりになります。結果的に、障害年金に必要な証明が出来ず、障害年金を受け取れないと言う相談者は本当に多いです。
このタイプの相談者様は、20年も前のことを詳しく覚えていらっしゃいます。確固たる信念でお話しをなさいます。年金事務所の相談でこのような話をなさると、もう障害年金は無理です。
記憶がしっかりしてらっしゃるからこそ、客観的な証拠は持っていない。証拠などなくても記憶がしっかりしてらしゃいますからね。結果的に、行政からは冷たく追い返されてしまいます。
そして、行政を恨むのです。話を聞いてくれない。気持ちを分かってくれない。ここまで辛い症状を抱えているのに助けてくれない。こんなにも辛い症状なのになぜ伝わらないのか。こんな伝わりやすいことなのに伝わらないなんて行政の怠慢だとしか思えない。
ここまで「本当にその通り」なのですが・・・・・・
たった1つの間違いが、全てを狂わせました。それが冒頭「ギリギリまで我慢した(頑張った)」ことです。障害年金の相談を多くお聞きして、多くの方に救いの道をお示しする立場からして、初診日が古すぎるのは比較的難しいのは事実です。
障害年金の制度は、長期間にわたって我慢することは想定していません。障害の定義をご存じですか?
診察から1年6か月にわたって治らないこと。症状が固定していること
これは2つの大事なポイントを含んでいます。
1つ目は、医師の診察を受けること。当然と言えば当然で、苦しいと感じたなら速やかに医師に相談して対処するものだということです。自分なりにいろいろ考えて、医師に相談しても意味がないと思う気持ちも分からなくはないですが、行政手続きにおいてその考えはありえません。
何かおかしな点があれば、専門家に相談して適切な手続きをとること。これが日本社会の基本となる考え方と言わざるを得ません。
2つ目は、1年6か月にわたって変わらないなら別の対処方法を考えること。そう、20年も我慢するなど行政サイドとしてはありえません。
申し訳ないけれども、20年も我慢した人を救う術は行政には持ち合わせておりません。我慢は1年6月までです。20年も我慢したことは誇りとでも思うのでしょうか?。それは行政には伝わりません。
我慢し続けた、この私を、ほんの少しでいいから助けてほしい?
この際、はっきり言います。この考え自体が間違いです。今すぐやめてください。我慢はせいぜい1年6月で終わらせて、体力や気力がしっかりしているうちに手立てを講じなければなりません。
逆の方がずっといいです。我慢はせず、図々しく助けを求める方が正しいです。その方が立ち直れます。未来は開けます。
どうなんでしょう?。ギリギリまで我慢して頑張ったという人に、人生がうまく行っている人っているのでしょうかね?。頑張り方の種類が違うように思えてならないのです。
比較として挙げるのもどうかとは思うけど……。うまくいってない家庭に共通しているのがこの「ギリギリまで頑張ること」のように思います。いよいよ辛くなってどうしようもなくなってから、少しだけでいいから助けてほしい?
そして、ギリギリまで頑張ったこと自体を無意味にしてしまう
実際、こういう時って「ここまで頑張ったのだから助けてくれて当たり前だ」「ほんの少しじゃないか!」 こうやって正当化して、場をわきまえずに救いを求め、何もかもぶち壊しにするんです。本当に残念な話です。
頑張り自体が無意味になり、過去の頑張りが仇となる。頑張ったこと自体が人生も家族も仕事も壊してしまう。そんな人たちと接してきて、もう本当にそのやるせなくて・・・。障害年金請求で、最大5年の遡及請求が認められることもあるのですが・・・。
まさに、コップ一杯の表面張力スレスレの水です。わずか一滴で溢れてしまい、止めようもなく溢れ、溢れた水が土台をも腐らせます。
・・・・・・もう本当にその・・・。1年6か月、改善しないなら、頑張るのはやめませんか?
障害年金の相談を通して、様々なお声をお聞きしてきた社会保険労務士法人HRMからのお願いです。
もしすでに7年、頑張り続けてきた人へ。
本当は遅すぎます。本来なら1年6か月です。でも、このまま我慢し続けるよりはずっといいです。理想は1年6か月ですけれども、3年でも5年でも10年でも、20年よりはマシです。
20年目でも、30年もそのままでいるよりはずっといいです。
この記事は私が書きました
三重県出身。工場の派遣バイトの傍ら社会保険労務士の資格を取得。中途採用で地元商工会議所勤務を経て、労働局の窓口業務を通して様々な事例を経験。 非正規就労の悲哀と行政の仕組みを熟知しているシナジー効果を強みとし、皆様のサポートをいたします。