皆さんご存じの電通事件(最高裁平成12年3月24日判決)は、過労死自殺に企業の安全配慮義務違反を初めて認定した事件です。
新入社員Aが慢性的な長時間労働の結果、うつ病を罹患し、入社約1年5ヶ月後に自殺しました。
遺族である両親が損害賠償請求し、最終的に約1億6,800万円で和解しました。
まず、本判決では
「労働者が労働日に長時間にわたり業務に従事する状況が継続するなどして、疲労や心理的負荷等 が過度に蓄積すると、労働者の心身の健康を損なう危険のあことは、周知のところである。労働基準法は、労働時間に関する制限を定め、労働安全衛生法65条の3は、作業の内容等を特に限定することなく、同法所定の事業者は労働者の健康に配慮して労働者の従事する作業を適切に管理するように努めるべき旨を定めているが、それは、右のような危険が発生するのを防止する ことをも目的とするものと解される。これらのことからすれば、使用者は、その雇用する労働者 に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度 に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当で あり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の右注意義務の内容に従って、その権限を行使するべきである。」
と述べ、会社・使用者及び 監督者に安全配慮義務があることが見て取れます。
また、本判決では
「企業等に雇用される労働者の性格が多様のものであることはいうまでもないところ、ある業務に 従事する特定の労働者の性格が同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない限り、その性格及びこれに基づく業務遂行の態様等が業務の過重負担に起因して当該労働者に生じた損害の発生又は拡大に寄与したとしても、そのような事態は使用者として予想すべきものということができる。しかも、使用者又はこれに代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う者は、各労働者がその従事すべき業務に適するか否かを判断して、その配置先、遂行すべき業務の内容等を定めるのであり、その際に、各労働者の性格をも考慮することができるのである。」
と述べ、労働者の性格をも考慮して労務管理を行わなければならないこと。管理職にも重い責任が課されていることが見て取れます。
よって、ハラスメントは安全配慮義務の問題として捉えることが重要である。
この記事は私が書きました
三重県出身。工場の派遣バイトの傍ら社会保険労務士の資格を取得。中途採用で地元商工会議所勤務を経て、労働局の窓口業務を通して様々な事例を経験。 非正規就労の悲哀と行政の仕組みを熟知しているシナジー効果を強みとし、皆様のサポートをいたします。