労働者派遣事業業務取扱要領には「その雇用する全ての派遣労働者を対象としたものであること」と定められています。併せて「受講時間は労働時間として扱い、相当する賃金を支払うこと」が必要です。
教育訓練計画に従わない派遣労働者もいると聞いています。どうすればいいでしょうか?。
キャリアアップに資する教育訓練は、労働である。
ですので、労働契約に基づく指揮命令権を発動し、強制することも可能でしょう。しかしながら、労働契約に従わないことを理由に、労働契約破棄、人事評価を低くする。これは可能性がある(恣意的な運用は許されません)ものの、労働(=キャリアアップに資する教育訓練)自体を強制することまでは許されないと考えられるのです。
したがって、キャリアアップに資する教育訓練が全員に実施されていないことを理由に、厚生労働省(需給調整事業)としては処罰対象とはできないと考えられます。
派遣労働者全員が受講したいと思える魅力的なコンテンツを提供することが望ましいものの、そのような表現は現在のところ見当たりません。現に労働者派遣事業関係業務取扱要領において「より多くの受講が見込まれる内容のものが望ましい」といった類の表現もありませんから、この理由で指導対象にはなりえないでしょう。根拠に基づかない指導は、絶対にありえません。
ただし、キャリアアップに資する教育訓練が全員に周知が図られていないことが立証(労働基準監督署に駆け込んだ派遣労働者の証言etc)されたとあっては、何らかの対応は求められるでしょう。
また、要領そのものが改正されることはありえます。要領は公開されているものですから、将来的には分かりません。新たな「根拠」が示されることはありえます。
キャリアアップに資する教育訓練は、全員に実施することを目指してくださいませ。
この記事は私が書きました
三重県出身。工場の派遣バイトの傍ら社会保険労務士の資格を取得。中途採用で地元商工会議所勤務を経て、労働局の窓口業務を通して様々な事例を経験。 非正規就労の悲哀と行政の仕組みを熟知しているシナジー効果を強みとし、皆様のサポートをいたします。