うつ病や適応障害、不安障害といった精神疾患によって、長期休職や退職に至るケースが増えています。
とくにメンタル不調は目に見えにくく、企業としての対応を誤ると、労務トラブルや訴訟に発展するリスクもある重要なテーマです。
こうしたケースでは、「障害年金」という制度を適切に案内できるかどうかが、従業員にとっても企業にとっても救いになることがあります。
今回は、精神疾患と障害年金に関する企業の対応ポイントを、社労士の視点からわかりやすく整理します。
Contents
【1】精神疾患が増加している背景
現代の職場では、業務量の増加・人間関係のストレス・働き方の多様化などにより、
20〜50代を中心にメンタル不調による離職や長期休職が年々増加しています。
とくに中小企業では、限られた人員の中で一人が欠ける影響が大きく、
復職支援や業務調整に追われる人事担当者の負担も無視できません。
【2】「障害年金」は精神疾患でも受給できる
障害年金というと、身体障害や重度の疾病のイメージを持たれる方が多いですが、
実はうつ病・統合失調症・双極性障害などの精神疾患も対象となっています。
■ ポイントは3つ
- 初診日から1年6か月以上経過しても症状が続いていること
- 医師の診断書に「労働や日常生活への制限」が具体的に記載されていること
- 保険料の納付要件を満たしていること
これらを満たせば、働けない期間中に月5〜10万円程度の年金を受給できる可能性があります。
【3】企業ができる「3つの支援」
精神疾患の社員に対して、企業として何ができるか。
障害年金をふまえた適切な対応として、次の3点を挙げます。
① 退職を急がせず、情報提供を
「退職すれば保険料が払えない」「収入がゼロになる」と焦る社員は少なくありません。
障害年金の制度を案内することで、焦りや不安を和らげ、冷静な判断につなげることができます。
② 診断書取得や手続きへの配慮
診断書の取得や役所での手続きは、精神的に大きな負担になります。
会社として、「社労士に相談してみたら?」と信頼できる窓口を紹介することも、十分な支援になります。
③ 復職制度の整備と柔軟な対応
障害年金は受給しながら一部就労も可能です。
短時間勤務や段階的な復職制度を整えておくことで、再発リスクを抑えながら戦力化が図れます。
【4】トラブルにならないために
メンタル不調者への対応を誤ると、以下のような問題が生じやすくなります。
- 退職強要と捉えられ、不当解雇と訴えられる
- ハラスメント認定や労災申請に発展する
- 復職時の不備で再発し、さらなる長期離脱に
こうしたトラブルを防ぐためにも、就業規則への明確な復職基準や休職制度の整備、そして社労士による第三者的な関与が非常に有効です。
まとめ
精神疾患による労働不能は、決して他人事ではありません。
企業としては、法的リスクを回避しながらも、人道的な視点で支援する姿勢が求められています。
「障害年金」という制度は、当事者にとって生活を支えるセーフティネットであると同時に、企業にとっても誠実な対応の手段になります。
社会保険労務士法人HRMでは、障害年金の申請支援から、復職制度の見直し、トラブル予防の労務設計まで、トータルでサポートしています。
対応に迷われた際は、どうぞ早めにご相談ください。
この記事は私が書きました

三重県出身。工場の派遣バイトの傍ら社会保険労務士の資格を取得。中途採用で地元商工会議所勤務を経て、労働局の窓口業務を通して様々な事例を経験。 非正規就労の悲哀と行政の仕組みを熟知しているシナジー効果を強みとし、皆様のサポートをいたします。