近年、「ハラスメント」という言葉は私たちの職場や日常生活において、ますます頻繁に聞かれるようになりました。従来のパワハラ(パワーハラスメント)やセクハラ(セクシュアルハラスメント)に加え、時代の変化とともに新しい形のハラスメントが次々と問題視されています。2025年現在、企業や組織において特に注目されているのが「リモハラ」「ケアハラ」「SOGIハラ」といった現代特有のハラスメントです。
Contents
リモート時代の新たな問題「リモハラ」
新型コロナウイルス以降、在宅勤務が常態化する中で問題となってきたのが「リモハラ(リモートハラスメント)」です。これは、上司が部下に対してZoomやTeamsなどのビデオ会議ツールを使って過剰に監視をしたり、チャットで即時返信を強要することでプレッシャーを与える行為を指します。「家にいても仕事から解放されない」「監視されている感覚が強い」といった声が多く、メンタルヘルスの悪化に直結しているケースも報告されています。
また、カメラを常にオンにしておくよう強要される、背景や私生活について言及されるなど、プライバシーの侵害にもつながる問題が多く、企業としては明確なガイドラインの整備と、管理職への教育が不可欠です。
「良かれと思って」が逆効果の「ケアハラ」
次に注目されているのが「ケアハラスメント(ケアハラ)」です。これは、育児や介護などの家庭状況に配慮するつもりで発した言葉や行動が、本人にとっては不快だったり、キャリアに悪影響を与える可能性があると感じさせてしまうハラスメントです。
たとえば、「お子さん小さいんでしょ?負担になるからこの仕事は任せないよ」などの発言は、一見配慮に見えて、本人の能力や意欲を軽視するものとして受け取られることがあります。特に女性社員やシングルペアレントに対して、無意識に機会を奪ってしまうことになりかねません。
多様性社会の課題「SOGIハラ」
近年、性的マイノリティに対する理解が社会全体で求められる中、「SOGIハラスメント(性的指向や性自認に関するハラスメント)」も深刻な問題として浮上しています。たとえば「男なんだからしっかりしろ」「あの人って男?女?」といった不用意な発言が、LGBTQ+当事者に対して差別的な言動と受け取られ、心理的負担を与える場合があります。
企業においては、SOGIに関する正しい理解を深める研修や、相談窓口の設置、匿名での申告制度など、制度面の整備も重要です。
ハラスメントは「予防」が最も重要
いずれのハラスメントにも共通するのは、加害者の多くが「自分は悪気がなかった」「そんなつもりではなかった」と感じている点です。つまり、意図的でなくても、受け手が不快に感じればハラスメントとなりうる時代に私たちは生きているのです。
だからこそ、企業や管理者が「何がハラスメントにあたるのか」「どのような言動が誤解を生むのか」について、正しく認識し、予防に力を入れることが何よりも求められます。
まとめ:組織文化の改革がカギ
昨今のハラスメント問題は、個人の言動だけでなく、組織文化や制度の在り方が問われています。表面的な取り繕いではなく、「誰もが安心して働ける環境づくり」を目指すことが、企業の成長にもつながるでしょう。
ハラスメントを「過去の問題」ではなく、「今ここにある課題」として捉え、私たち一人ひとりが行動を見直すこと。それが、これからの時代を生き抜く職場づくりの第一歩なのです。
この記事は私が書きました

三重県出身。工場の派遣バイトの傍ら社会保険労務士の資格を取得。中途採用で地元商工会議所勤務を経て、労働局の窓口業務を通して様々な事例を経験。 非正規就労の悲哀と行政の仕組みを熟知しているシナジー効果を強みとし、皆様のサポートをいたします。