業務指導の部下に対するフォローの有無について名古屋高判平 22.5.21・地公災基金愛知県支部長(A市役所職員・うつ病自殺)事件を見てみたいと思う。

【事案】
Y部長は、市役所に勤務する公務員として、常に市民のため、高い水準の仕事を熱心に行うことをモットーとしており、実際、自ら努力と勉強を怠ることなく、大変に仕事熱心で、上司からも頼られる一方、部下に対しても高い水準の仕事を求め、その指導の内容自体は、多くの場合、間違ってはおらず、正しいものであった。話し方がぶっきらぼうで命令口調である上、声も大きく、朝礼の際等に、フロア全体に響き渡る程の怒鳴り声で「ばかもの。」、「おまえらは給料が多すぎる。」等と感情的に部下を叱りつけ、それ以外に部下を指導する場面でも、部下の個性や能力に配慮せず、人前で大声を出して感情的、かつ、反論を許さない高圧的な叱り方をすることがしばしばあり、実際に反論をした女性職員を泣かせたこともあった。
Y部長は、前記のような指導をしながら、部下をフォローすることもなかったため、部下は、B部長から怒られないように常に顔色を窺い、不快感とともに、萎縮しながら仕事をする傾向があり、部下の間では、Y部長の下ではやる気をなくすとの不満がくすぶっていた。Yの部下への指導状況は、A市役所の本庁内では周知の事実であり、過去にはこのままでは自殺者がでるなどとして人事課に訴えた職員もいたという状況で、部下Xが自殺した。
【判旨】地方公務員災害補償基金愛知県支部長がした地方公務員災害補償法に基づく公務外認定処分の取消
Yの部下に対する指導は、人前で大声を出して感情的、高圧的かつ攻撃的に部下を叱責することもあり、部下の個性や能力に対する配慮が弱く、𠮟責後のフォローもないというものであり、それが部下の人格を傷つけ、心理的負荷を与えることともあるパワーハラスメントに当たることは明らかである。Yが仕事を離れた場面で部下に対し人格的非難に及ぶような叱責をするようなことがあったとはいえず、指導の内容も正しいことが多かったとはいえるが、それらのことを理由に、これらの指導がパワハラであること自体が否定されるものではない。

この判決から読み取れることは、感情的になって言い過ぎてしまった場合、後日のフォローの必要性。なぜ指導したのか、解決策のヒントなどの説明が必要性である。
また、普段からのコミュニケーション重要性が理解できると思います。

この記事は私が書きました

Category