職場での若手社員の言動に、「ちょっと配慮が必要かも」「もしかして特性があるのでは」と感じたことはありませんか?

近年、発達障害の診断を受けた20代〜30代の若手社員が、障害年金の申請を検討するケースが増えています。

特にASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠陥・多動性障害)など、外見やコミュニケーションに問題が見えにくい“目に見えない障害”の支援が、企業に求められています。

今回は、発達障害を抱える若手社員の障害年金申請に際し、企業としてどのような理解と支援が必要かを、社労士の視点から解説します。

【1】障害年金は“働いていても”もらえる制度

障害年金と聞くと、「仕事をしていたら対象外では?」と誤解されがちです。

しかし、障害年金は就労の有無にかかわらず、日常生活や就労に著しい支障がある場合に支給される制度です。

発達障害の方は、下記のような困難を抱えがちです。

  • 対人関係やチーム業務で強いストレスを感じる
  • 忘れ物やケアレスミスが多く、業務に支障を来す
  • 感覚過敏や過集中により、通常業務が困難になる
  • 周囲との温度差から自己肯定感が著しく低下する

このような特性が続き、職場の配置転換や出勤制限、産業医の指導等が行われている場合、障害年金の対象となる可能性があるのです。

【2】企業が知っておくべき“初診日”と“納付要件”

障害年金の申請で最も重要なのは、「初診日がいつか」「その時点で年金保険料を納めていたか」の2点です。

若年層の場合、初診日が10代・学生時代にさかのぼることも多く、

「学生時代に発達障害の診断を受けたが、申請のことは知らなかった」というケースが少なくありません。

企業の人事部や産業医がその事実を把握した時、「本人の申請の権利をどう守るか」を考える姿勢が、今後の信頼関係に直結します。

【3】職場での対応と社内調整のポイント

障害年金はあくまで“個人の権利”であり、企業が申請を主導することはできません。

一方で、社内の勤務状況の証明書類や配慮内容の記録が、申請の裏付け資料として重要になるため、現場と人事の連携が不可欠です。

具体的な支援策:

  • 勤怠記録(遅刻・早退・欠勤の状況)の正確な管理
  • 就業規則や評価制度における“合理的配慮”の実施履歴の保存
  • 面談記録や産業医意見書の保管と本人への提供体制
  • 本人からの申し出に応じた業務調整の検討と記録

これらを通じて、企業として“支援の意思”を見せることが、本人の安心感と将来設計につながります。

【4】申請後の働き方の見直しも忘れずに

障害年金を受給しているからといって、企業はその社員を排除するべきではありません。

むしろ、「障害を受け止めつつ働き続けられる職場環境」を整えることが、長期的な雇用安定につながります。

  • 通院日への配慮(勤務シフトの柔軟化)
  • 成果主義よりもプロセス重視の評価制度
  • 社内研修を通じた“発達障害への理解促進”

制度だけでなく“風土づくり”が重要であることを忘れてはなりません。

まとめ

発達障害は「特別な人」だけのものではなく、誰にでも可能性のある“特性のひとつ”です。

その理解と支援を広げることは、社員全体の働きやすさにつながると同時に、企業の社会的信用にも影響します。

社会保険労務士法人HRMでは、障害年金申請に関する個別相談から、職場支援・合理的配慮の導入・就業規則整備まで、一貫したサポートを提供しています。

「発達障害かもしれない若手社員がいる」

「申請について聞かれたが、どう答えてよいかわからない」

そんな時は、どうぞ専門家へご相談ください。

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