「助成金って本当に会社に入るんですか?」

「申請したのに通らなかった、という話を聞いたことがあります」

このような声を経営者から聞くことは少なくありません。

助成金は返済不要の貴重な資金調達手段ですが、実際には要件不備や手続きミスによって“受け取れなかった”というケースも数多く存在します。

それは、制度の複雑さに加え、助成金が“実務と連動している”という特性によるものです。

本記事では、助成金申請の現場で実際に見られる「落とし穴」と、それを避けるための実務ポイントを解説します。


【1】「制度ありき」の導入はNG

最も多いのが、「この助成金をもらえるなら制度を導入しよう」という順序で進めた結果、実態が伴っていないと判断されて否認されるパターンです。

たとえば、キャリアアップ助成金(正社員化コース)では、就業規則の整備・契約変更・評価制度の運用など、複数の実務要件を満たす必要があります。

単に「契約書だけ変えた」状態では、助成対象とは認められません。

助成金は、あくまで“実態があって、その結果として制度に合致した場合”に支給される後払い制度です。

“もらうためにやる”という発想は、リスクが高いのです。

【2】申請前の“日付”に要注意

助成金申請では、「いつから始めたか」「いつ届出したか」が非常に重要です。

たとえば、就業規則の改定日や、労働条件通知書の発行日、雇用契約の開始日などが対象期間の外であれば、形式上は通っていても“要件未達”とされて不支給になることも。

よくある失敗例:

  • 社労士に頼まずに制度導入だけ先に進めてしまった
  • 実際の適用よりも後の日付で書類を整えてしまった
  • 残業時間の帳票や給与明細が助成金の基準を満たしていなかった

これらは“書類がきれい”でも、突合すれば不備が見抜かれてしまいます。

【3】“添付書類地獄”をなめてはいけない

助成金の審査では、提出書類の正確性だけでなく、「添付証明資料」の量も膨大です。

  • 就業規則の届出証明(労基署受付印)
  • 対象労働者の賃金台帳・出勤簿・労働条件通知書
  • 該当時期の給与明細・雇用契約書の写し
  • 社会保険加入の確認資料(取得届写し、資格取得通知など)

これらを正しく、期限内に揃えなければ、審査の途中で“不備通知”が来てタイムアウトとなることも多いのです。

【4】実務の伴走者としての社労士の役割

助成金申請は「書類作成が得意なだけ」では不十分です。

実際には、企業ごとに異なる就業実態や雇用契約、働き方を踏まえて、

  • どの制度に適合しているか
  • 要件を満たすための実務設計はどうするか
  • 万一否認された場合のリカバリー方法は?

といった「実務+法律」の両視点での支援が不可欠です。

社会保険労務士は、厚労省所管の助成金について唯一、法定業務として申請代行が認められた専門家です。

だからこそ、計画段階から社労士を巻き込み、制度導入から申請・報告書類までを一貫して対応していくことが、受給の確度を大きく高めるカギとなります。

まとめ

助成金は「使えたらラッキーな資金」ではなく、「制度として計画的に使いこなすべき戦略資金」です。

しかし、その一方で落とし穴や否認リスクが潜んでいる“複雑な実務領域”でもあります。

社会保険労務士法人HRMでは、申請のためだけでなく、助成金を“経営戦略の一部”として活用するための設計支援を行っています。

「この制度、うちも対象になる?」という初歩的なご相談からでも、ぜひお気軽にお声がけください。

この記事は私が書きました

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