2025年10月に予定されている最低賃金の改定は、過去最大級の上げ幅になると報じられています。すでに政府は「全国加重平均1,100円超え」を目標に掲げており、これにより一部地域では1,100円〜1,200円という水準も視野に入ってきました。

この動きは企業にとって非常にインパクトの大きいものです。とりわけパート・アルバイトを多く抱える小売業、飲食業、福祉業界にとっては、経営直撃レベルの人件費上昇となることも少なくありません。

では、どのようにこの変化に備えるべきなのでしょうか。この記事では、「今からできる給与見直し術」をテーマに、社労士の視点から実務的なポイントを解説します。

1.給与テーブルの総点検を

まず行うべきは、自社の給与体系(時給制・日給制・月給制)を横断的に確認することです。

特に月給制の場合、「最低賃金割れ」に気付きにくいのが盲点です。

例えば、月給180,000円で週40時間・1日8時間労働の場合、1時間あたりの賃金は約1,038円です。愛知県の最低賃金が1,030円→1,100円になったとすれば、実質「最低賃金割れ」です。月給であっても時給換算でチェックすることが必要です。

2.手当の扱いに注意!

最低賃金に含めてよい賃金・含めてはいけない賃金があります。たとえば以下は最低賃金に含まれない手当です。

  • 精皆勤手当
  • 通勤手当
  • 家族手当
  • 賞与や臨時手当 など

これらを含めて「クリアしている」と思い込んでいると、違法状態となっている可能性があります。

3.給与体系の「構造改革」を考える

最低賃金をただ上げるだけでは、企業の負担は増す一方です。

そこで考えたいのが、「給与の見える化」と「役割給・スキル給の導入」です。

同じ時給制でも、基本給+評価給+職責手当のように分けることで、評価や能力に応じた調整がしやすくなります。昇給基準を明確にすることで、従業員の納得感も高まり、定着率向上にもつながります

4.助成金を活用しよう

最低賃金の引き上げに伴い、国も企業支援の制度を設けています。特に注目したいのが:

  • 業務改善助成金

→ 賃金引上げとあわせて設備投資や業務効率化を行うと最大600万円支給

  • キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)

→ 非正規社員の賃上げで1人あたり5〜7万円の支給実績あり

これらは事前申請が原則のため、「最低賃金が上がったから考える」では遅いのです。今から社労士に相談し、支給対象かどうか確認しておきましょう。


5.就業規則・労使協定の整備も忘れずに

給与改定に伴い、就業規則や賃金規程の変更が必要になる場合があります。

また、割増賃金や深夜労働の取扱いが複雑になることもあるため、労使協定の見直し・再締結も重要です。


まとめ

最低賃金の改定は避けられません。しかし、ただ「仕方ない」と思って対応するのではなく、制度設計の見直しや助成金活用を通じて、前向きに給与改革を進める好機でもあります。

私たち社会保険労務士法人HRMでは、企業ごとの給与体系の診断から助成金の申請代行まで、一気通貫でサポートしています。

「うちは大丈夫かな?」と少しでも気になった方は、お気軽にご相談ください。

この記事は私が書きました