助成金は、企業経営における“隠れた財源”と呼ばれる存在です。資金調達というと、銀行融資や補助金を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は「返済不要」「使途自由」「税務上は利益計上される」という特徴をもつ助成金こそ、経営を下支えする強力なツールなのです。

まず知っておいていただきたいのは、助成金は“雇用”や“人材育成”といった取り組みを行っている企業であれば、対象となる可能性が非常に高いということです。つまり、「何か特別な取り組みをしないといけない」というイメージは誤解であり、実は日常の労務管理や採用、教育に紐づく施策が助成金の対象になることが多いのです。

例えば「キャリアアップ助成金」は、有期契約社員を正社員に登用するだけで数十万円が支給される制度です。また、「人材開発支援助成金」は社員に研修を行う際、その費用の一部が支給される仕組みです。これらは経営者にとって、“必要な取り組み”を“お金の支援付きで実施できる”という意味で、非常に効率的な経営手法といえます。

特に注目したいのが、助成金の入金は「雑収入」として計上される点です。これは売上と異なり、変動費がかからない“純利益”に直結する収入です。仮に100万円の助成金を受け取った場合、売上で換算すれば数百万円の売上増に相当します。つまり、助成金はキャッシュフローの改善と利益率の向上に直結する“実効性の高い資金”なのです。

ただし、助成金を活用するにはいくつかの注意点もあります。第一に、「事前の申請が必要」という点です。たとえば正社員化や研修の実施前に届け出をしておかないと、制度の対象外となってしまいます。実際に、「やったのに申請できなかった」というケースは少なくありません。だからこそ、制度を正確に理解し、タイミングを逃さず行動することが重要です。

また、助成金は種類が非常に多く、厚生労働省や都道府県、業種団体がそれぞれ独自の制度を持っていることから、自社に合ったものを見つけるには専門知識が不可欠です。加えて、申請書類の整備や実績報告など、手続きには一定の労力が必要です。こうした手間を乗り越えるためにも、社労士などの専門家と連携しながら進めることをおすすめします。

助成金は、単なる一時的な資金補填ではなく、組織づくりや働き方改革を推進する“成長戦略の一部”と捉えるべきです。人材育成、離職防止、多様な人材の活用といった課題に助成金をうまく活用することで、コストをかけずに“未来への投資”が可能となります。

「今は資金が苦しいから何もできない」ではなく、「助成金を使って未来に備える」。その発想の転換が、会社の利益体質を強くし、持続可能な経営につながる第一歩となるのです。

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