2025年、いよいよ団塊世代の多くが75歳に到達します。いわゆる「2025年問題」として、社会保障費の増大や医療・介護現場の人手不足が語られることが多いですが、企業にとってもこの節目は大きな意味を持ちます。特に中小企業においては、退職ラッシュや技能継承の断絶といったリスクが現実味を帯びてきています。
団塊世代の存在感と企業内の位置づけ
戦後の第一次ベビーブームで生まれた団塊世代は、長年にわたり企業の中核を担ってきました。多くの企業で、現在も嘱託社員や再雇用者として働き続けており、現場の「知恵袋」や「技術の継承者」として貴重な存在です。
しかし、75歳という年齢を前に、健康面や家庭の事情から退職を選択するケースが急増することが予想されます。中小企業では「彼がいなくなったら困る」といった属人的な業務依存が残っている場合も多く、引き継ぎが不十分なまま現場が混乱するリスクもあります。
継続雇用制度の限界と見直しの必要性
高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業確保措置が努力義務化されましたが、75歳となると制度的にも再設計が必要です。多くの企業では「65歳まで再雇用」「その後は必要に応じて延長」という曖昧な運用がされており、本人の意欲や健康状態、就業規則との整合性を欠いたまま場当たり的な対応になりがちです。
これを機に、75歳以降も働ける仕組みづくり、あるいは退職を前提とした技術継承・人材育成体制の構築が求められます。
技能継承の仕組みづくりが急務
団塊世代が長年培ってきた技能やノウハウは、マニュアル化しにくい暗黙知である場合が多く、いざ退職となると「誰も同じ品質で再現できない」という事態が起こりかねません。
そのため、定年を迎える数年前から後継者をつけ、OJTやドキュメント化を徹底する仕組みを整備することが重要です。人事評価制度に「技能継承項目」を組み込み、ベテラン社員の役割を「働く」から「伝える」へシフトさせる企業も増えています。
社労士として企業に寄り添う支援を
私たち社会保険労務士法人HRMは、企業の実情に合わせた継続雇用制度の設計や高年齢社員の労務管理、技能継承計画の導入をサポートしています。2025年問題は一過性の現象ではなく、今後さらに加速する「多世代共存社会」の入り口です。
この機会に、貴社の高齢社員に関する制度や実務の見直しを検討してみませんか?小さな一歩が、将来の大きな安定につながります。
この記事は私が書きました

三重県出身。工場の派遣バイトの傍ら社会保険労務士の資格を取得。中途採用で地元商工会議所勤務を経て、労働局の窓口業務を通して様々な事例を経験。 非正規就労の悲哀と行政の仕組みを熟知しているシナジー効果を強みとし、皆様のサポートをいたします。