会社を経営していると、社員との間に大小さまざまな問題が起こることは避けられません。遅刻や欠勤、残業代の支払い、有給休暇の取得、懲戒処分、退職トラブルなど――こうした問題が発生したとき、経営者として明確なルールに基づいて対応できるかどうかは、企業の信頼性を左右します。

その「ルールブック」となるのが 就業規則 です。

就業規則は、労働時間や給与、休日、服務規律など、労働条件の基本を明文化した会社のルール集です。従業員が10人以上いる事業所では、労働基準法により作成と届出が義務付けられていますが、10人未満でも整備しておくことを強くおすすめします。理由は大きく3つあります。

1. トラブルを「未然に防ぐ」抑止力になる

たとえば、「遅刻が多い社員をどう指導すればよいのか」「問題行動がある社員に対して注意・処分が適切にできるのか」といったときに、就業規則に服務規律や懲戒事由を定めていなければ、会社の判断が恣意的だと見なされかねません。明文化されたルールがあれば、従業員にも「これ以上は許されない」という意識を持たせることができ、トラブルの予防にもなります。

2. 経営側のリスクを減らせる

就業規則がない、あるいは内容が古く実態と合っていない場合、労使トラブルが発生した際に会社側が不利になることがあります。特に、未払い残業代や不当解雇の問題では、明確なルールとその運用が問われます。現代では労働者の権利意識も高まっており、労基署や弁護士への相談も容易です。備えあれば憂いなし。万が一のときに会社を守る盾として、就業規則は非常に重要です。

3. 組織の成長を支える「共通の基盤」になる

就業規則は単なる法的義務ではなく、企業文化の根幹をなすツールでもあります。会社としてどのような働き方を目指すのか、どんな価値観を大切にしているのかを、規則という形で全社員と共有することができます。新入社員の教育にも活用できますし、「制度はあるが知られていない」「ルールが人によって違う」といった不公平感をなくし、組織の一体感を育む基盤となります。


就業規則は、一度作れば終わりというものではありません。社会の変化や法改正、働き方改革、副業解禁、ハラスメント防止など、時代とともに見直しが必要です。ぜひ、自社の現状に合った就業規則を整備・運用することで、働く人にも経営者にも安心できる職場環境を築いてください。

この記事は私が書きました