近年、企業と従業員の間で発生する「労使トラブル」が増加しています。厚生労働省のデータによると、労働局への個別労働紛争の相談件数は、年間100万件を超える水準で推移しており、労働者の権利意識の高まりとともに、トラブルの早期相談・法的対応が加速しているのが現状です。

企業はなぜトラブルに巻き込まれてしまうのか?

その背景には、「制度の未整備」「コミュニケーション不足」「判断基準の曖昧さ」があります。具体的には以下のようなケースが典型です。

  • 未払い残業代の請求
  • 解雇や退職勧奨の正当性をめぐる争い
  • パワハラ・セクハラ等のハラスメント対応の不備
  • 有給休暇の取得拒否や管理の不備
  • 就業規則や雇用契約の不一致

いずれのトラブルも、「発生してから対応する」のでは手遅れになりがちです。労働者側に弁護士や労働組合がついた場合、企業側は大きなリスクを負うことになります。金銭的損失はもちろん、企業イメージの悪化や人材流出にもつながりかねません。

労使トラブルを防ぐために企業ができる3つの備え

1. 就業規則・雇用契約書の整備と運用

「ルールがあったのに、従業員が知らなかった」「古い就業規則のまま運用していた」――このような状況はトラブルの温床になります。現行の法律や働き方に合った内容に見直すとともに、社員への周知と説明を徹底することが重要です。

2. 管理職への労務教育の徹底

労使トラブルの多くは、現場での対応ミスから発生します。特に、パワハラや不適切な指導、安易な解雇通告など、管理職の不用意な言動がきっかけになるケースは少なくありません。定期的な労務管理研修を行い、「してはいけないこと」「すべき対応」を明確に伝えることが効果的です。

3. 相談窓口の設置と早期対応の仕組み

トラブルが大きくなる前に、社員の不満や悩みに耳を傾けることが重要です。外部相談窓口の設置や、社労士など専門家との連携によって、第三者的な立場からの助言・対応が可能になります。

企業の信頼は、一つのトラブルで大きく損なわれることもあります。一方で、適切なルールと誠実な対応があれば、社員との信頼関係を深め、組織力の向上にもつながります。今こそ「労務管理は経営戦略の一部」という視点で、備えを万全にしておくべきではないでしょうか。

「うちはまだ大丈夫」ではなく、「起こる前に備える」ことが、トラブルを未然に防ぐ最も有効な手段です。御社の状況に合わせた労務体制の見直しや社内研修のご相談も承っております。ぜひ一度、お気軽にご連絡ください。

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