新型コロナウイルスワクチン接種会場の運営や、同コールセンター業務を受託した近畿日本ツーリスト。自治体に報酬を請求する際に人件費を水増し請求していたことが明らかになった。
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労働者派遣契約や業務請負契約への正しい知識について
おそらく人材ビジネス全般に携わる事業者にとって、労働者派遣契約や業務請負契約について間違った常識がはびこっていることに憤る方は多いと思います。その際たるは「労働者派遣事業はピンハネ(中間搾取)である」という点なのです。
労働者派遣事業は単なるピンハネではありません。直接雇用では対応できない労働者へのサービスを担うのが労働者派遣事業です。
また、必要な労働力の確保に強みを持っていて、労働者を使用する事業者が必要な労働力を確保する業務を受注するのが人材ビジネスです。
一般的な業務請負契約(アウトソーシング全般)に言えることですが、発注者が通常必要とされる人員を想定したうえで受注者は「もっと低いコストで受注できる」と考えているから外注をご提案するものです。
発注者が5人でやっていることを、独自のツールを用いるなどして例えば1人で受任できる自信があるからこそ、4人分の費用で見積もって提案します。5人でこなす費用からすれば安いから、発注者にとってもメリットがあります。そして受注者は1人でこなすから利益が生じます。また、1人でこなせるスタッフは発注者のスタッフと比べて受注側の実務担当者は「生産性が高い」ことになるわけですから相応しい給料を得られるという仕組みになるわけです。
この状況について、1人でやっていることを知った発注者が「3人分の経費を返せ」「1人で出来るのなら4人分の費用で見積もるのは詐欺だ」なんて主張はありえますか?
業務請負(委託)契約を人数を基準とすべきではない
この事例で「必要な人数を揃えることが絶対条件である」との考えで契約をする、それ自体は間違いではありませんがそれはもはや業務請負(委託)契約として適正とは言えません。
人数を基準にし、絶対条件とするのであれば、労働者派遣契約でなければなりません。そして使用者として労務管理を行うことになります。もちろん、必要な人員の充足が叶わない場合もあるでしょうが、その場合については双方で何らかの取り決めをすることでしょう。
行政機関が需給調整事業課の指導対象となる場合もある
行政が発注者となる場合、一般競争入札が行われることが多いようです。当然、公表されるわけですが、その公表された落札条件が不適切な案件が散見されます。
行政機関と言えども、担当者レベルでは法律のプロではありませんし、公表された入札案件について1つ1つが厳密に弁護士によるリーガルチェックがなされているかと言えば・・・・・・。どうなのでしょうか?
実際、公表された入札情報がガイドライン(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」に抵触している事例もちょくちょく見受けられます。個別具体的な事例をあげつらうのも何ですから、実際に見たことのあるパターンについて例示してみようと思います。
この記事は私が書きました
三重県出身。工場の派遣バイトの傍ら社会保険労務士の資格を取得。中途採用で地元商工会議所勤務を経て、労働局の窓口業務を通して様々な事例を経験。 非正規就労の悲哀と行政の仕組みを熟知しているシナジー効果を強みとし、皆様のサポートをいたします。