「会社物品の私的使用」の具体的な裁判例としてグレイワールドワイド事件(H15.09.22東京地判)を見てみたいと思う。

【事案】 広告会社Y社は、採用後22年間にわたり、秘書業務、英文による情報提供業務、翻訳業務等に従事していたXが、業務用パソコンから私用メールを送受信したなど計9項目の言動を捉えて、無期限の出勤停止を命じ、概ね3か月後に解雇を通告したところ、Xが、就業規則上の解雇事由に当たらず、解雇権の濫用にあたり無効であるとして、地位の確認と賃金・賞与等の支払いを求めて提訴した。東京地裁は、就業規則所定の解雇事由に該当する行為もあるが、約22年間の非違行為もなく良好な勤務実績を考慮すると、解雇が客観的合理性・社会的相当性を備えているとは評価し難いとして、解雇権の濫用に当たるとした。
【判旨】(1) 就業規則に特段の定めがない限り、職務遂行の支障とならず、使用者に過度の経済的負担をかけないなど社会通念上相当と認められる限度で会社のパソコン等を利用して私用メールを送受信しても職務専念義務に違反するとはいえない。しかし、私用メールで上司を批判するなど、会社の対外的信用を害しかねない批判を繰り返すことは、誠実義務の観点から不適切であり、解雇事由に該当する。
(2) 上司への誹謗中傷等解雇事由に該当する行為はあるが、約22年間にわたり非違行為もなく、良好な勤務実績を挙げて会社に貢献してきたことを考慮すると、本件解雇は客観的合理性及び社会的相当性を欠き、解雇権の濫用に当たり無効である。

SNS上での不適切な言動等で企業が社会的ダメージを受ける事件が多発しています。 解雇権の濫用とされないためにも就業規則にきちんと謳い指導記録を残しましょう。もし不安のある方は、当社ではリスク回避型就業規則作成のお手伝いをしていますのでご相談ください。

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