「賞与の請求権の発生時期」に関する具体的な裁判例として福岡雙葉学園事件(H19.12.18最三小判)を見てみたいと思う。

【事案】学校法人Yは、人事院勧告に準拠して給与規程を改定し、11月の理事会で、教職員の月給額の引き下げを決定した上、12月期の期末勤勉手当の支給額について改定後の給与規程に基づいて算定した額からその年の4月分から11月分までの給与の減額分を控除するなどの調整をしてその支給額を定めた。これに対し教職員Xらは、期末勤勉手当が一方的に減額され、一部しか支払われなかったとして、その残額の支給を求め提訴
【判旨】
期末勤勉手当の支給については、給与規程に「その都度理事会が定める金額を支給する。」との定めがあるにとどまり、具体的な支給額又はその算定方法の定めがないことから、前年度の支給実績を下回らない期末勤勉手当を支給する旨の労使慣行が存したなどの事情もうかがわれない本件においては、期末勤勉手当の請求権は、理事会が支給すべき金額を定めることにより初めて具体的権利として発生する。
本件期末勤勉手当の支給額については、5月理事会における議決で、算定基礎額及び乗率が一応決定されたものの、人事院勧告を受けて11月理事会で正式に決定する旨の留保が付されたことから、5月理事会において本件各期末勤勉手当の具体的な支給額までが決定されたものとはいえず、本件期末勤勉手当の請求権は、11月理事会の決定により初めて具体的権利として発生したものと解される。
したがって、本件期末勤勉手当において本件調整をする旨の決定は、既に発生した具体的権利である期末勤勉手当の請求権を処分し又は変更するものであるとはいえず、この観点から効力を否定されることはない。

(1)賞与の請求権は、使用者の決定や労使の合意・慣行等によって、具体的な算定基準や算定方法が定められ、支給すべき金額を定めることにより初めて発生する。
(2)賞与の支給日または一定の基準日に在籍する者のみ賞与を支給するという取扱いは有効

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