「年次有給休暇」に関する具体的な裁判例として八千代交通事件(H25.06.06最一小判)を見てみたいと思う。

【事案】解雇により2年余りにわたり就労を拒まれたY社の社員Xは、解雇無効の判決が確定して職場復帰した後に、合計5日間の労働日につき年次有給休暇の請求をして就労しなかったところ、Y社は、年次有給休暇の成立要件を満たさないとして、5日分の賃金を支払わなかった。このためXは、年次有給休暇権を有することの確認(Xが請求の前年度において年次有給休暇権の成立要件(雇入れの日から6か月の継続勤務期間又はその後の1年ごとにおいて全労働日の8割以上出勤したこと)を満たしているか)、控除した賃金・遅延損害金の支払と不法行為による損害賠償を求めて提訴
【判旨】
無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は、年次有給休暇の成立要件における出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものというべきである。

(1)年次有給休暇の成立要件である出勤率について、無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含めて算定しなければなりません。
(2)年次有給休暇を取得したことにより皆勤手当を減額することなどは、その趣旨、目的、それにより失う経済的利益の程度、年次有給休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、年次有給休暇の取得を抑制し、それにより労基法が労働者に年次有給休暇取得の権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものでない限り、無効とはいえない。

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