実際、問い合わせがあった事例です。

派遣元の事業者によっては、特定の派遣先に依存しないことを強みとする場合でした。「ウチは、派遣先はいくつもありますので、必要ないとなったらいつでも切っていただいて大丈夫です」

確かにこれは、他社との比較優位性ではあります。だからハッキリと「このことを個別契約書に書いても問題ないよね」との問い合わせでした。即座に別の派遣先を用意できるなら、派遣先からの補償を求めないという事業戦略もありえるとは思います。

確かにこの会社に関して言えば、派遣労働者の仕事を適正に提供できる絶対の自信があると言い切っていたのです。実際に派遣切りがあっても大丈夫だと言うのです。

例え適正な運営が出来るとしても、こんな契約はダメ

これは、派遣労働者に不利益にならないような契約を厳格に結んで運用できていたとしても、派遣元と派遣先との契約でこのような取り決めをすることは認めないというのが労働局(需給調整事業課)の見解でした。

すなわち、このような契約があれば絶対に指導対象にするし、どのような主張をしてこようと指導の必要性は変わらない。どうあれ指導に応じなければ正式に是正命令を出すし、それでもというなら許可取消に向けた手続きを粛々と進める。許可取消において聴聞の機会はあるが、ほぼ通らないとお考え下さいとの断固たる姿勢でした。

※本当にそこまで突っ張ってはいませんし、ここまで詳細な発言ではありませんが「指導の対象となる」とは言われました。相当強い意思を感じとれる場面ですね。

派遣先の横暴には非常に敏感

本来、労働者を指揮命令をする権限には重たい責任が伴うのです。つまり派遣先側なんです。そこを労働者派遣の事業者が安易に緩めることをしては示しがつかないのでしょうね。……そう考えれば合点いくかなと感じました。

そう、派遣先の横暴の片棒を担ぐ形で労働者派遣事業をするというのは、労働局としては最も嫌悪しているのですね。そこに歯止めをかけるために、労働者派遣事業について許可制として厳格運用するという方向性が定まっているのです。

単に労働者派遣法に詳しいだけでは適切なコンサルティングは難しいと感じた一件でした。労働基準法の成り立ちも含めた本質的な理解なくして、適正な労働者派遣事業を行うことはできないと言わざるをえません。

人材ビジネスに詳しい社会保険労務士法人HRMでした。

この記事は私が書きました

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