3つの制度が三位一体となったもの

 これまでお話しした通り、評価制度は従業員にとって「納得感」があるものであり、会社が望む行動を促す仕組みでなければなりません。
 では、従業員に納得感を感じてもらうためにはどうしたらいいのでしょうか。その答えとして次の3点を目明確に伝える必要があります。

①どんな人材になれば
②いくらの給与が得られるようになり
③どうすればその人材になったと評価されるのか

です。
 この3つを明確にすることで、「〇〇歳までに給与が□□万円になりたいから、△△な人材だと認めてもらうように××をやったらいいんだな」と、自身のキャリアプランが明確になり、評価に対する納得感が向上します。

 この3点を明確化したものが、
①等級制度
②報酬制度
③人事評価制度
です。
 評価制度のみを人事評価制度と考えるケースもありますが、私たちはこの3つの制度が三位一体となったものを人事評価制度と呼んでいます。

「等級制度」は「理想的な従業員」の定義づけ

 組織には係長、課長、部長などの役職が存在します。求められる役割はそれぞれ異なります。その役割を実現するために必要な能力や達成すべき成果、負うべき責任のレベルの大きさを表したものが「等級」です。等級制度は、「一般社員と主任では何が違うのか」「課長から部長に昇進するにはどうすればいいのか」という疑問に、能力、成果、責任範囲などを具体的に答えられるよう作成しないといけません。

「報酬制度」は「理想的な従業員」の報酬を定める

 評価の結果及び等級に基づく給与額を設定します。業務内容や個人の成果、役割、能力に応じた「成果給」「役割給」「職能給」などがあり、会社の経営方針に沿って設計します。

「評価制度」は「理想的な従業員」にどれほど近づいているかの目安

 会社の経営方針や経営計画の実現には、目指すべき組織像と人材像の明確化が必須です。評価制度はそうした組織像や人材像を実現するために、従業員が「どのような姿勢で仕事に取組み」、「どのような能力を身につけ」、「どこまで達成できたか」を評価します。評価の結果は、昇進や昇格などの等級に影響するとともに、給与に反映されます。

 これらの制度設計は、会社の存在意義や存在価値を表す「経営理念」やそれを実現するための「経営計画」、そして経営計画を達成するための「理想の組織や人材」に関する考え方を表した「人事ポリシー」が土台となります。

なぜ従業員を雇い、育てるのか

  それは、経営計画の達成に必要な人材を育成し、経営理念を実現するためです。つまり、人事評価制度設計の前段階には、経営理念や経営計画、人事ポリシーの明確化があるのです。

 経営理念の実現のためにどのようは経営計画を立てるべきか。そしてその経営計画を遂行できる組織体制とはどのようなものか。各部門には何名の幹部が必要で、どのようは人物を配置するべきか。将来的に幹部まで昇進してもらうためには、従業員にどのような考え方や行動を希望するのか。
 このようなビジョンがあって、はじめて「等級制度」「報酬制度」「評価制度」は作成可能になります。他社の制度をまねたり、そのまま流用しただけの人事評価制度がうまくいかないのは、自社のビジョンと合致していないため、従業員にとって納得できない制度になっているからです。

この記事は私が書きました