派遣先通知書とは、労働者派遣契約に基づいて実際に派遣されることとなる派遣労働者について、派遣先(就労先)に発行する書類になります。派遣先にとって、これは労働者名簿ど同等の意味を持つ極めて大切な書面です。
そもそも、事業場には「何らかの名簿にない人物がいるなんて、あってはならない」のです。例え搬入業者であっても入館記録をつけるはずです。来客者受付をするはずです。派遣先通知書がないと、事業場の治安が破綻してしまいます。
そんな大切な派遣先通知書ですが、許可制で運営されている労働者派遣事業としては法令上必須とされる項目を網羅した記載例が示されています。決して、欄を省くことはしてはいけません。そして、この記載欄に関することは労働者派遣事業者として必ず把握していなければならないということでもあります。
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取引先のために、より詳細に記載することについて
必要以上に詳しい内容を通知することは、個人情報の適正管理の観点から禁止されています。一般的には「より良くする工夫」は称賛に値することなのですが、こと派遣先通知書に関しては労働局からの指導対象となり是正を求められることになります。
労働者派遣で就労する労働者の基本的な権利関係に係ることですから、派遣先の求めがあろうと不用意な情報提供は慎まなければなりません。
年齢は書いてはいけない
派遣先通知書における年齢に関する欄は、「60歳以上か否か」。60歳以内の場合に、45歳以上60歳未満、18歳未満(実年齢)となっており、ずばりの年齢や生年月日の記載に置き換えることはしてはいけません。
こういった記載は、労働安全衛生法の観点から特別な対応が求められる年齢か否かを把握する必要こそありますが、派遣先の立場で実年齢を把握しなければならない法的根拠がないためです。
偽名(仮名)はどうでしょう?
派遣先通知書の考え方からすると、許されないとする根拠はないように感じます。最近では、接客の現場において名札に本名を書かない傾向がみられるようですね。レジ業務で発行されるレシート記載の担当者名でも同様のことがあるそうですね。
就労場所の事情ゆえに、偽名(仮名)では従事できない業務は多々あるとは考えられます。例えば品質管理の担当者名とか、何らかの資格を必要とする業務などです。
とはいえこれは、就労そのものの事情ですから、労働者派遣事業の運営とは別概念のこととして考えるべきことでしょう。
当然ですが、雇用責任を負う派遣元は偽名で雇用するなんてあってはいけません。雇用保険や社会保険の手続き、源泉徴収など、確実な本人確認は欠かせません。特に外国人労働者の場合、不法就労に該当する可能性は極めて高いです。
各種保険関係の適正加入について
雇用保険や社会保険の適正加入を証明するために、簡便な方法として保険証のコピーを渡すことが行われていることもあるようですが、好ましいこととは言えません。提示するに留める。不必要な情報は黒塗りにするといった対応が望ましいとされています。実務的に、敢えてこのことが問題視された事例は寡聞にして聞きませんが、労働者派遣法の趣旨を踏まえて不用意な情報提供は慎むべきです。
派遣先通知書は、労働関係諸法令が求める使用者(派遣先)としての義務のためにありますから、必要最低限の情報に留めなければならないのです。でなければ、派遣元として、個人情報の管理が不適切であるとされます。
特記事項について
派遣労働者から、個人情報について特別な配慮を求められた際には可能な限り応じるように努めてください。派遣先通知書にない欄については、柔軟に「特記事項」を設けるのもよいでしょう。派遣労働者から特に伝えてほしい要望については対応することはできます。
とはいえ、労働関係諸法令との調整も大事になりますので、都道府県の需給調整事業(部・課・室etc)とよく協議して下さい。
派遣労働者側から就労先(派遣先)に伝えてほしい要望であれば、その要望の根拠を書面で残すといった工夫をするとよいでしょう。
この記事は私が書きました
愛知県出身。大企業、中小企業、外資系といった様々な企業で働いた経験を活かし、貴社に合わせた組織作りをご提案いたします。 また、人事労務の側面から、企業サイクルの「創業期」「成長期」「成熟期」「衰退期」あらゆるフェーズで問題解決に向けた支援を行います。