普通解雇の「客観的に合理的な理由」【ユニオンショップ協定による解雇】の具体的な裁判例として三井倉庫港運事件(H01.12.14最一小判)を見てみたいと思う。

【事案】
Y社は、A労働組合との間にY社に所属する海上コンテナトレーラー運転手で、A組合に加入しない者及びA組合を除名された者を解雇する旨のユニオン・ショップ協定を締結していたところ、Y社に勤務する海上コンテナトレーラー運転手Xらが、昭和五八年二月二一日午前八時半ころ、A組合に対して脱退届を提出して脱退し、即刻訴外B労働組合に加入し、その旨を同日午前九時一〇分ころY社に通告した。A組合は、同日、Y社に対しユニオン・ショップ協定に基づく解雇を要求し、Y社は、同日午後六時ころ本件ユニオン・ショップ協定に基づきXらを解雇した。このため、Xら前記ユニオン・ショップ協定に基づく解雇は無効であるとしてその効力を争った
【判旨】
(1) ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないものというべきである。
(2) したがって、ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法九〇条の規定により、これを無効と解すべきである(憲法二八条参照)。
(3) そうすると、会社が、ユニオン・ショップ協定に基づき、このような従業員に対してした解雇は、同協定に基づく解雇義務が生じていないのにされたものであるから、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできず、他に解雇の合理性を裏付ける特段の事由がない限り、解雇権の濫用として無効であるといわざるを得ない。
(4) Yが、ユニオン・ショップ協定に基づき、Xらに対してした本件各解雇は、同協定によるYの解雇義務が生じていないときにされたものであり、本件において他にその合理性を裏付ける特段の事由を認めることはできないから、結局、本件各解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することはできず、解雇権の濫用として無効であるといわなければならない。

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