普通解雇の「客観的に合理的な理由」【職場規律違反、職務懈怠による解雇】の具体的な裁判例としてトラストシステム事件(H19.06.22東京地判)を見てみたいと思う。

【事案】
情報処理業界向けのサービス業を営む会社YのシステムエンジニアXが、派遣先で繰り返し行った長時間にわたる電子メールの私的使用や、私的な要員派遣業務のあっせん行為が、服務規律、職務専念義務に違反していたとして解雇されたのは解雇権の濫用であるとして、地位保全と未払賃金の支払等を請求
【判旨】
Xの私用メールなどについては、Xの義務に違反するところがあるといわざるを得ないが、これを解雇理由として過大に評価することはできず、また、要員の私的あっせん行為についても、そのような事実が窺われるとする余地はあるものの、これを認めるに足りず、このようなYが主張する服務規律違反、職務専念義務違反については、解雇を可能ならしめるほどに重大なものとまでいうことはできない。また、Yの指摘するXの能力不足についても、上記のとおり、解雇を理由づけるほどまでに能力を欠いているとは認め難い。そして、これらの事情を総合すると、Xの勤務態度、能力につき全く問題がないとはいえないものの、これをもってしても、いまだXを解雇するについて正当な理由があるとまでいうことはできず、本件解雇は、解雇権の濫用として、その効力を生じないものといわざるを得ない。

解雇するには相当ハードルが高いです。そのため就業規則にきちんと解雇手続きを定めておきましょう。また、解雇するまでの指導は文書で残しておきましょう。もし不安のある方は、当社ではリスク回避型就業規則作成のお手伝いをしていますのでご相談ください。

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