業務指導の他の部下に対する指導状況について福岡地裁小倉支部判平27.2.25・国家公務員共済組合連合会事件を見てみたいと思う。

【事案】
Y1師長が、定例の面談の席で,「私が上にXは無理ですと言ったらいつでも首にできるんだから」などと発言したこと(Y1言動3)、Y病院で発生した、退院患者に同性の別の患者の薬を取り違えて渡すという過誤が、日勤担当看護師が上記退院患者の薬を準備し(この段階で取り違えが発生)、その旨を同日の夜勤担当看護師であったXに引き継ぎ、Xと翌日の日勤看護士が上記薬の確認を怠ったために発生したものであったことから、Y1師長は、本件過誤の事実経過を聴衆他の看護師の前で厳しく叱責すると聴取当する際,他の看護師もいるナースステーションでXを厳しく叱責し、また、過誤防止対策の一環として、関与した看護師に対し当日の出来を時系列で書いて提出するよう指示し、Xにだけ反省文の提出を求めた(Y1言動4)等
【判旨】損害や慰謝料など,総額約120万円
Y1言動4は、Xも自身い責任があることを認めている本件過誤に関しされたものであるところ、その重大性に照らすと、ナースステーションにおける叱責が、上司として許容される相当な指導の範囲を逸脱するものと直ちにいうことは艱難である。しかし、本件過誤に関与した他の看護師2名と比較してXの落ち度が明らかに大きいと認められないにもかかわらず、他の2名の看護師が作成した報告書とはその趣旨が異なるといえる反省文をXのみ書かせたことは、複数の部下を指導監督する者として公平に失する扱いであったと言わざる得ず、反省文提出までにされた口頭での指導ないし叱責についても、他の看護師と比較して長時間かつ厳しいものであったことが窺える。
客観的には部下という弱い立場にあるXを過度に威圧する言動と評価すべきであって,社会通念上許容される相当な限度を超えて過重な心理的負担を与える違法なものであった。
特に,Y1言動3は,Xに雇用契約の継続について不安を生じさせうるものであり,部下に対し過度に不安を生じさせる違法な言動であると判断した。

部下の個性に応じた業務指導は管理職の裁量の範囲内である。
しかし、同じミスをした部下に対し、部下Aには指導し、部下Bはかばうなど、指導に差を設ける合理的な理由のない明らかな不公平・不平等が生じていないか、業務指導には注意が必要である。

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