御社の労務管理に、労働者派遣法の考え方を取り入れて可能性を広げます。社会保険労務士法人HRMの森井拓也です。

労働者派遣契約といえども、事業者間の契約の1つにすぎません。契約は、双方の合意によって成立するものですから、契約の解除も自由にできます。しかし労働者派遣法は違います。派遣先からの一方的な解除を制限すなわち禁止する条文があるのです。(法28条)

しかも、法28条で定める派遣先からの解除の禁止は、例え派遣元との合意があったとしても認めていません。契約の当事者同士で合意があろうと解除できない契約とは、すごい話ですね。

普通の考えて、唖然とする話ですよね。当事者同士で本当に納得づくの合意があったなら表面化はしないでしょう。派遣元派遣先のみならず当の派遣労働者も含めての円満解決の場合ですね。それでも禁止とは……。

労働者派遣契約は、派遣元と派遣先の事業者間だけのことではありません。派遣労働者側がいます。派遣労働者が本気で異議を唱えたら、事はおさまらないということです。契約の当事者で合意の存在を主張しても認めない。そこまで法律の条文に明記しているのです。

事例1:女性労働者の婚姻・妊娠・出産

具体的な例示に、女性労働者の婚姻・妊娠・出産を挙げています。これらの事実のみをもって、派遣労働者として受け入れない(交代を求める)ことは禁止されていると言えますが、これらの事実に伴って現に就労ができない場合の取り扱いについては極めてデリケートな問題になります。

とはいえ、実はシンプルな話でして、派遣先には使用者責任の観点から労働基準法等を遵守しなければならないわけですから、直接雇用の労働者と同様の配慮をすればいいわけです。と、行政の立場ではシンプルに考えているようです。

実はもう1つ。非常に影響力の大きな定めがありまして「派遣先へ苦情を申し出たこと(法第40条第1項の規定に基づく)」も挙げています。これは非常に範囲が広いと言えます。派遣労働者への理不尽な要望があった場合には、労働者派遣法に基づいた進め方に関する基本的な方針を定めているわけですね。

派遣先への苦情の申し立てについては、改めてテーマにしたいと思います。

【注1】この内容は、令和3年4月付の労働者派遣事業関係業務取扱要領を参考にまとめています。内容は適宜改正されることがあります。

【注2】派遣先からの契約解除について一定の制限が設けられていて、 派遣先からの契約解除が無効となるとの定めがあるわけです。 実務的には「禁止」と考えて差し支えないのですが、厳密にいえば「禁止とは書いてない」のも事実です。

【注3】法律全般に言えることですが、法違反に対してどう行動するかは当事者の問題になります。本気で争う場合は弁護士の仕事になりますし、法律に基づいた社内体制の構築となりますと私ども社会保険労務士法人HRMとしてアドバイスをすることができます。

この記事は私が書きました

Category