御社の労務管理に、労働者派遣法の考え方を取り入れて可能性を広げます。社会保険労務士法人HRMの森井拓也です。

日本における従業員は、メンバーシップ型とはよく言われていますね。そして、ジョブ型はなかなか根付かないと。

そもそも、他社から派遣労働者を受け入れて就労させる派遣先の体制は、ジョブ型そのものなのですよ。就労場所も業務内容も、契約書にきちんと書かなければなりません。

労働者派遣個別契約書にはジョブについて記載します

労働者派遣法には、契約の仕組みが体系的に示されています。それが出来ていなければ、労働局(需給調整事業課)からの指導の対象となり、改善報告が求められます。自発的な改善がなされない場合であっても労働局は命令を発することができますし、あくまで命令に従わなければ労働者派遣事業の許可取消もありえます。

本質的には、メンバーシップとしての労働者を、労働者派遣契約で確保しようというのが不合理ともいえます。派遣労働者に対して、派遣先では就労いただいているのですが、仕組みとしては「労働者を評価する」「労働者への投資(人材育成・教育など)を行う」ものではありません。そんなありさまで、メンバーシップ(仲間!)と言っても詭弁でしかないでしょう。

もちろん、実情として仕方がないことは多々あるようです。自社での直接雇用に取り組んでも応募者が集まらない。労働者を集めることについて優れたノウハウを有する労働者派遣事業者を活用する方がコストの優位性があるといったことですね。そんな状況はもう、メンバーシップとして非常に歪んでいるとしか言いようがありません。

労働者派遣契約は、許可制ゆえの指導体制があります

ジョブ型の雇用を行うのであれば、労働者派遣事業の仕組みを参考にするといいでしょう。メンバーシップすなわち内部で完結するからこそ通用してしまう曖昧さを排除するという意味で、外部の労働者派遣事業者を活用するイメージで社内制度を構築するわけですね。許可制ゆえの国からの指導体制もありますから、ジョブ型の導入自体はやりやすいはずなのですが……。

とはいえ、メンバーシップ型の社内体制において一部をジョブ型でとなった時に「不合理な待遇格差」が問題視されることはありえます。それを回避する手法としては、労働者派遣契約は活用の余地はあります。雇用主が異なるわけですから、就労場所において全く異なる契約形態があっても違法にはなりません。

ちなみにですが、外部の事業者を使うにあたって生じるマージンについて、労働者派遣事業を自社で行うのは無理があります。いわゆる「関係派遣先割合8割規制(法第23条の2)」があるためです。かつては、労働者派遣事業許可を第二人事部として用い、待遇切り下げを目的に使われた反省から来ているそうです。

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