御社の労務管理に、労働者派遣法の考え方を取り入れて可能性を広げます。社会保険労務士法人HRMの森井拓也です。

ものすごく真面目な話、一般的な労働者(正社員等)とは別に派遣労働者のための法律が別に定められているとしたら、不当な差別につながるといわざるをえません。あくまで、同じ労働者として平等に扱われるべきものです。

労働者すなわち「指揮命令を受ける人」に対しては、雇用と使用の2つの責任が伴います。労働者派遣とは、この2つを異なる事業者が役割分担を明確にして責任を負うことを想定した仕組みになります。派遣労働者といえども雇用と使用の法律に基づく保護が働く点で、一般的な労働者と何ら変わるところはありません。

すなわち、雇用責任も使用責任も労働関係諸法令の中にあり、その責任の所在を労働者派遣法の定めにより明確にされていて、分離させた以上は雇用責任がどこにあるかを追跡できなければならないから、雇用責任を担う派遣事業者は許可制にあったということです。かつては、届出制の特定労働者派遣事業がありましたが、それでは雇用責任を追及しきれなくなって、ついには届出制の特定労働者派遣事業は廃止となったわけです。

派遣先の事業者は、雇用責任を負わないのは確かにその通りではあります。

とはいえ、使用者責任の観点から不適切なことが行われていた場合、雇用責任を負う側としては想定外の負担が生じることになります。そもそも労働者派遣契約は、ごく通常の使用関係を想定したものでして、そこを逸脱すれば雇用責任としては派遣元が負うとはいえ、不適切な使用者責任によることが明らかであればその責任追及を免れるものではないということになります。

とはいえ、事業者間の契約に関することですから、責任追及を実際に行うにあたっては何かと煩雑ではあります。一種の契約トラブルとして、法律的に対処するより他ありません。自分自身でやるか、このことを弁護士に相談して代理を受任していただければ弁護士が対応するというわけですね。

労働関係諸法令が求める雇用責任は、派遣元が負います。それでも、労働関係諸法令に基づく使用者責任は派遣先にあるのは明らかですから、派遣元が負う雇用責任の対価があって当然ですし、それは事業者間での労働者派遣個別契約(厚生労働省は締結に必要な項目を厳格に示しています)に基づきます。

極端かもしれませんが、派遣先で派遣労働者に不正行為をさせたとしましょうか。

なるほど派遣労働者の立場では、派遣先の指揮命令に従わなければなりません。しかし「不正行為は適切な業務内容といえるのか?」ということです。とはいえ、派遣労働者の立場ではその「適切な指揮命令か否か」を判断する立場にはありません。

 派遣先には使用者責任があります。雇用契約にない労働者だから何をしてもいいなんて訳がないのです。適切な業務内容ではない指揮命令によって生じた不具合には責任が生じるわけです。

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